租税競争と差別課税

大島 考介

大学教育出版 税別 2,000円
 
目 次

第1章 租税競争
  1.1 租税競争とは
  1.2 EUの対応
  1.3 OECDの対応
第2章 租税競争のモデル
  2.1 ZMWモデル
  2.2 非対称地域のモデル
  2.3 その後の理論研究
  2.4 実証研究
第3章 差別課税とは何か
  3.1 差別課税とは
  3.2 アイルランドの挑戦
第4章 差別課税の理論と基本モデル
  4.1 差別課税をめぐる議論
  4.2 基本モデル
第5章 非対称地域1 人口
  5.1 2次生産関数モデル
  5.2 コブ・ダグラス型生産関数モデル
第6章 非対称地域2 生産性
  6.1 2次生産関数モデル
  6.2 コブ・ダグラス型生産関数モデル
  6.3 人口・生産技術とも非対称な場合
第7章 集積の経済
  7.1 モデル
  7.2 集積の経済の影響
第8章 単一の資本と差別課税
  8.1 単一資本モデル
  8.2 数値計算
  8.3 結語
第9章 異なる課税ルール
  9.1 異なる課税ルールのモデル
  9.2 2次生産関数
  9.3 コブ・ダグラス型生産関数
  9.4 2国間のゲーム
  9.5 結語
付録 数値計算のプログラム

 
 書店では、経済学や財政学でなく税務や税法のコーナーに置かれがちなようです...ネットの書店でもどうぞ。

 
以下、本書の概要。

 第1章と第2章が租税競争。第1章では、まず各国間の租税競争の状況、経緯について簡単に解説し、タックス・ヘイブン等の問題に対するEU やOECD の対応について述べます。
 第2章では、まずZodrow and Miezkowski (1986) とWilson (1991) らの先駆的な理論モデルを解説し、これら以後の理論研究を紹介します。また租税競争の実証研究の基本的な手法を概説し、いくつかの研究を紹介します。

 第3章以降は差別課税。第3章では、差別課税とは何かや、EU やOECD といった国際機関の見解等を紹介します。また、1990 年代に経済的に目覚ましい成長を遂げて注目される一方、その税制が差別課税であるとして批判を受けたアイルランドを取り上げ、その経緯を記します。
 第4章では、差別課税の理論研究を振り返った上で、差別課税の研究に大きな影響を与えたKeen (2001) のモデルを基にした「基本モデル」を用いて、対称的な2国モデルにおいて、差別課税の方が均一課税よりも望ましくなることを示します。

 以下では基本モデルを拡張し、第5章では地域間で人口が異なる場合、第6章では生産性も異なる場合を考え、後者において基本モデルと異なる結論が生じうることを示します。
 第7章では、集積の経済(規模の経済性)が存在する場合に、それが無い場合と比べて差別課税の重要性が高まることを示します。
 第8章では、基本モデルや多くの差別課税の研究が前提としてきた、課税ベースである2種類の資本が別物という仮定を外し、資本は1種類しかないと仮定します。このとき政府は資本自体(供給側)の相違ではなく、生産者の技術の相違に基づく資本の価格弾力性(需要側)の違いに注目して税率を決定し、この結果、一定の条件の下で均一課税の方が望ましくなることを示します。
 第9章では、一方の国では差別課税、他方では均一課税といった現実に見られるが理論モデルでは扱いにくい状況を、数値計算を用いて分析します。
 付録では、計算に用いたMathematica 7.0 (Wolfram Research 社)のコマンドを示します。

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